変化を恐れない。チャレンジを続けるシャープが選んだのは |
IoT事業本部は、シャープの要でもある商品部門を支えるセグメントのひとつに位置づけられる。ここに属するクラウドソリューション事業部 インフラサービス部のメンバーは、2016年に本社・堺事業所へ拠点を移し、国内外のシステム管理と社内のIT推進をミッションとして業務を行っている。24間稼働を続ける社内システムはビジネスの基盤でもあるため、専門のスキルを持つ外部のサービスに運用を委託していた。しかし、2018年夏に転機が訪れる。
シャープ株式会社 IoT事業本部 クラウドソリューション事業部 インフラサービス部 部長 伊藤 武司 氏 |
統合SAP基盤のOSであるWindows Server 2008が2020年1月にサポート終了を迎えるため、新基盤を構築することになったのだ。そしてこのタイミングで下されたのが「データセンターの内製化」という新たなミッションだった。システムを安全かつ安定した状態で維持するため「外部」に置かれていたデータセンターを「内部」で構築・運用し、シャープ社内にITのプロフェッショナルを育成するというその方針に、「ノウハウがほとんどない状態からのスタートでした」と当時の驚きを語ったのはインフラサービス部 部長の伊藤 武司氏だ。
「24時間365日の安定稼働にかかる継続的な運用費は決して安価ではありません。内製化がコスト削減につながるということは理解していましたが、それまでほとんどを委託していたため社内にスキルのある人間もおらず、とにかく右も左も分からないという状況でしたね」(伊藤氏)。
新たな統合SAP基盤については様々なメーカーやベンダーから提案があったという。「語弊があるかもしれませんが、ノックスからの提案はかなり「挑戦的」でした」と伊藤氏が語るのには理由がある。一般的にシステム基盤として実績が多いのは3Tierと呼ばれるサーバ・ストレージ・ネットワークの構成だ。それぞれ製品を組み合わせて構築する「レガシーシステム」とも呼ばれ、多くの企業に採用されているという安心感がある。しかし運用には専門製品知識が必要で、またそれぞれの互換性を考慮しつつ運用しなければならない。もちろん、近年導入の進んでいるHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)製品も検討に挙がった。必要な機能や要素が全て含まれているため短期間で導入できる上、運用にもそこまで深いスキルを必要としない。しかしその半面、ユーザーの環境によっては日々のメンテナンスやバージョンアップに想定外の負荷がかかる、拡張時の柔軟性に欠けるといった課題があることも知られるようになってきた。そういった複数の提案の中でノックスから提示された「挑戦的」な構成が、次世代ハイパーコンバージドストレージとしてDatrium社が開発した「Datrium DVX」を中心としたシステムだった。
後編では、劇的な改善をもたらした「Datrium DVX」の導入効果とメリット、今後の展開と製品への期待について記述する。