Rubrikで仮想化基盤の自動的なバックアップを実現 |
慶應義塾大学の情報基盤に関する研究、教育の支援とITシステムの円滑な運用を目的として1999年に発足した慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター(以下、ITC)。ITC本部とキャンパス毎に設置された三田ITC、日吉ITC、信濃町ITC、理工学ITC、湘南藤沢ITC、芝共立ITCの6組織で構成され、それぞれが高速ネットワークで相互接続している。そんなITCの中でも情報基盤の先端的な研究と教育支援、運用をリードしてきたのが湘南藤沢ITCだ。
慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 湘南藤沢インフォメーション テクノロジーセンター所長 植原 啓介 氏 |
湘南藤沢ITCの所長で慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の植原 啓介氏は、同ITCの特色を「キャンパスワイドのネットワークをいち早く構築し、新しい取り組みを積極的に展開してきました。自由にトライアルを行い、その成果を全体に広めていく文化を持っています」と紹介する。
湘南藤沢ITCが管理運用するITシステムは、学生と教職員含め計6,000ユーザー規模となる。学生・教職員向けの多くのシステムの構築と運用を内製化しており、2011年からシステム基盤を仮想化に移行を加速させている。現在、物理サーバ50台と260台超の仮想サーバが稼働しており、仮想化基盤には、メールサーバ、Webサーバ、LDAPサーバ、DNSサーバや計算用サーバといったほとんどのシステムを移行済みだ。
慶應義塾 湘南藤沢インフォメーション テクノロジーセンター(ITC)主任 山方 崇 氏 |
そのような中課題になったのが、仮想化基盤のバックアップであった。湘南藤沢ITC主任の山方 崇氏はバックアップの課題について「仮想サーバが構築しやすくなったことで仮想化基盤上のサーバ台数や容量も格段に増えました。これまではrsyncなどのデータ同期ツールを使って仮想マシン毎に必要なデータや設定ファイルをバックアップしていましたが、台数と容量が増えたことでそうした運用も難しくなってきていたのです」と話す。
仮想化基盤では、データストア上の仮想マシンファイルをバックアップすることは比較的簡単に行える。だが、1台当たり数百GBにも達するファイルをバックアップするには膨大な時間が掛かる。一方、従来のような運用を続けると台数の増加と共に管理が複雑化し、万一のトラブルの際に復旧が難しくなることが予想された。できるだけ手間を掛けずに大量のデータを保護するにはどうすればいいか。そんな時に出会ったのがバックアップアプライアンス「Rubrik」だった。
湘南藤沢ITCでは、仮想化基盤のバックアップにあたり、大きく3つの要件を検討した。1つめは、バックアップに掛かる工数の削減だ。仮想環境では、サーバのデプロイは一瞬でできるようになるが、サーバのバックアップはこれまで通りそれぞれに異なるバックアップポリシーが必要になる。このため、仮想マシンの台数と容量が増える以上に、バックアップの時間と工数が増加していた。
2つめは、バックアップ取得ミスを減らすことだ。ファイルや設定ファイルを同期する場合、サーバの動作状況によって、正しくバックアップが取得できないことがある。このため、バックアップが正しく取得できているかを毎日チェックする必要があり、負荷が高まっていた。
3つめは、正しく短時間でリカバリできることだ。バックアップ作業が複雑になると、リカバリに掛かる作業負荷は高くなる。仮想マシンのスナップショットを取得し、必要な時にスナップショットをマージするという運用も検討したが、手順が複雑になりやすく、有事の際のリカバリミスが懸念されていた。
こうした要件を満たすバックアップ製品を探していた時、ノックスから提案されたのがRubrikだった。山方氏は、操作デモを見た際に「簡単な操作でバックアップ運用ができることに衝撃を受けました」と当時を振り返る。すぐに評価機を使った検証を開始し、3つの要件を満たすことができるかを確認していった。
山方氏は、評価のポイントについて「システム運用においてバックアップは非常に重要ですが、バックアップ運用に手間をとられてシステム運用そのものに支障が出るのは問題です。意識しなくてもきちんと運用できる点に大きな魅力を感じました」と話す。
また、植原氏も「ユーザーの立場から見るとバックアップをどう取得するかは大きな問題ではありません。大事なのは、機器や人のアサインなどを含めて、キャンパスのネットワークを安定して運用できる環境を整備すること。Rubrikはそれを実現するには最適なソリューションでした」と評価する。
後編では、劇的な改善をもたらした「Rubrik」の導入効果とメリット、今後の展開と製品への期待について記述する。